●キツネに狙われているマガンの群れを目撃!
マガンの群れに近づくキツネを発見!
去年の冬の出来事。
田んぼで落ち穂をついばんでいるマガンを、キツネが狙っている場面に出くわしたことがあった。そのときのことを書きたい。
とある田んぼ横の道を車で走っていると、キツネが身をひそめている姿を偶然発見した。周辺にはマガンの群れが3集団ばかりいた。1つの群れは10〜22羽ほどだった。
ここ数年、マガンに対して非常に愛着を持っていた私は、気になって気になってとてもそのまま通り過ぎることができなかった。ただしこの時点で、マガンの群れがキツネに気づいているような感じは受けていた。
警戒しているようすのマガンたち
というのも、これまでの経験から、人間が近づいていくと彼らの親(またはリーダー格?)と思われる何羽かが、不審な者がいる方向へ頭と体を向けるのを知っていたからだ。
キツネは頭を低くして身がまえ、田んぼ脇の側溝に沿って少しずつ少しずつ近づいていく。群れの何羽かは、キツネのほうに体を向けていた。私は車を停めてしばし観察していた。キツネは狡猾で(偏見かもしれない)ちょっとだけ高くなったあぜ道の陰に身を隠し、だんだん群れに近づいていく。
ここで我慢できなくなった私はついに、キツネの近くを通っていた細い砂利道に車で進入してしまった。
すると、車に気づいたキツネが逃げていく。ところが敵もさる者で、微妙にマガン寄りに逃げていくではないか。これはヤバイと思ったとき、ついにキツネが群れに向かって走り出した!
ずっと警戒していたらしいマガンたちは、いつものかわいらしい鳴き声ではなくて、これまで聞いたことがないような激しい警戒音で鳴きながら、一番近くにいた群れがいっせいに飛び上がり逃げていった。
危険だったのはキツネ、そして私……
このとき私はハッと気づいたのだ。私が車で周囲をうろちょろ動いていると、逆にマガンたちは、キツネと私の車の両方を警戒せざるをえなくなる……
うしろ髪を引かれる思いだったが、そこからすぐに現場を離脱。車をゆっくり走らせながら、その後の光景を見ていたが、キツネは残った2つの群れを次々に襲おうとしたものの、見届けた範囲ではマガンたちは逃げおおせたようだった。
自然の摂理に反する行為に反省
じつはその後、深く反省した。自分の行為が自然の摂理に反した、とても間違った方向の正義感の使い方だということについて。キツネだって獲物をとらなければ生きていけないのだし、もしかして子ギツネにやるエサをとろうとしていたのかもしれない。
ただ、朝な夕なに見かけるマガンたちの、こんな場面に気づいてしまったため、少なくとも目の前でやられるのは見たくなかった。今回だけはしょうがなかったよな、と自分に言い訳をした次第。
以上、自然の一大スペクタクル目撃のエピソード。
(上の写真はそのときのものではありません。そんな余裕はなかった)
〈マガンとは?〉 真雁
・ガンカモ目 ガンカモ科 全長約70cm
・いくつもの家族が大群をつくり、V字型に飛ぶ姿は晩秋から冬の風物詩
・早朝いっせいに飛び立つ迫力あるようすは「朝の飛び立ち」、夕方水辺に帰ってくるようすは「ねぐら入り」
・エサは水田の落穂や草の実など
・古くは戦国の陣立てに、現代におけるラグビーの「雁行陣」も雁の飛び方をまねたもの