夏が旬のホヤ、じつは栄養豊富
- 夏が旬の食材だから、夏バテに効く
- タウリンやグリコーゲンが豊富で、鉄分はほうれん草の5倍!
- 「5味」すべてが入った稀有な食材
- 食べ方いろいろ。刺身はもちろん、燻製やづけの商品も
- 食べて三陸沿岸の復興支援
- ホヤ豆知識1
- ホヤ豆知識2
- ホヤを食べないのはあまりにもったいない!
- 三陸ホヤが新幹線で東京へ! 首都圏でも朝獲りホヤを味わえるように
パンパンにふくれた殻が鮮度のあかし。寒流と暖流がぶつかる三陸の海ならではの美味
夏が旬の食材だから、夏バテに効く
私が愛してやまない食材、ホヤを紹介したい。初夏から秋にかけてが旬の、東北・北海道の海の幸だ。たぶん全国的にはあまり知名度は高くなく、南へいけばいくほど食べる人が少なくなる食材かもしれない。
しかし東北・北海道ではとてもポピュラーな食材で、この季節、毎日食べてもあきないほど大好きという人も多い。海水で殻がパンパンにはちきれそうな、ホヤのさばきたてを食べてほしい。新鮮で身がきゅっとしまったコリコリの歯ごたえと、口のなかいっぱいに広がる濃厚な旨みと香りがたまらない。
タウリンやグリコーゲンが豊富で、鉄分はほうれん草の5倍!
ホヤは珍味とよばれることが多いが、じつは栄養面で非常に優れた食材だという事実はあまり知られていない。アミノ酸が豊富で、疲労回復に効果の高いグリコーゲンや、高血圧の改善やコレステロール値を正常に戻す効果があるタウリンも多く含まれる。血液サラサラ効果で有名なEPA(エイコサペンタエン酸)はアジの約3倍だ。
また貧血ぎみの女性にうれしいのが、鉄分もたっぷりなところ。ゆでたほうれん草の約5倍もの鉄分が入ってるのだ。
ホヤの殻の上には2つの突起があるが、+に見える突起が海水と餌を取りこむ口で、−に見える突起は産卵などに使われる口だ。新鮮さの見分け方は、肉の赤みが濃くて光沢があり、何より殻がパンパンに張っていること。
鮮度が命の食材だけに、配送で味が落ちることが長くネックになっていたが、冷蔵や養殖技術の進歩で獲れたてに近い状態で届くようになった。ジメジメした梅雨で免疫力が低下し、次にいっきにやってくる夏の暑さを乗り切るためにも、栄養たっぷりのホヤはおすすめだ。
さらに酒がお好きな方には、やはり三陸の海沿いで造られた地酒がおすすめ。以前、この蔵元さんに話をうかがったことがあるが、地元の魚介を引き立てる食中酒として醸しているとのことだった。実際に試してみたが、三陸の獲れたてホヤを地酒で味わうことで、さわやかな潮の香りが口のなかいっぱいに広がる。
「5味」すべてが入った稀有な食材
幸か不幸か、ホヤは食べる人を選ぶ食材でもある。なかなか全国区になれない理由は足が早すぎること、つまり鮮度がいのちの魚介類だからだ。味が泥臭いとか苦いとかの感想は、鮮度が落ちたものを食べたケースがほとんど。
たとえば、京都で生まれ育った食い道楽の知人がいたが、最初に東北で食べたのがすごく旨かったからと、ずっとホヤのファンだった。見た目はたしかに、少々アレかもしれない。でもこれは、美味な食材にはおうおうにしてあること。
そして、ぜひ強調しておきたいのが「5つの味覚」−−旨味、甘味、苦味、塩味、酸味−−がすべてそなわった稀有な食材だということである。食べた人によって味の感想がちがうのは、鮮度の違いもあると思うが、5味がすべて含まれていることも理由のひとつ。ひと言では表現しきれない複雑な味わいには、ちゃんと裏づけがあるのだ。
食べ方いろいろ。刺身はもちろん、燻製やづけの商品も
生のまま刺身で、または酢醤油やレモンを絞って食べる人が圧倒的に多い。だが、なかには生の刺身は苦手だけど、加工品は大好きという人もいる。たとえばホヤの燻製は、5味をもつホヤをいちだんと複雑な味わいに変えてくれる。また、塩辛といえばイカが思い浮かぶが、ホヤの塩辛、さらにはホヤの「づけ」まであるのだ。
食べて三陸沿岸の復興支援
産地の漁師さんや会社が、さまざまに知恵をしぼりつつ新たな商品を生み出しつづけているのは、東日本大震災の後遺症がいまだに残るからだ。
原発事故の影響で、震災前には収穫の約6〜7割が輸出されていた韓国で、禁輸措置が継続されている。そのためにホヤ産地の関係者は、震災から10年になろうというのに依然として苦しい闘いを強いられている。
三陸沿岸で獲れる新鮮なホヤ! 食べることで復興支援のひとつにもなるから、この機会にぜひ味わっていただきたいと願っている。
ホヤの燻製(的)商品。旨みが凝縮して、かむほどに深い味わい
づけが旨いのはマグロだけじゃない。これぞまさにおとな味
ホヤ豆知識1
・高血圧予防のカリウム、肌や髪に良い亜鉛なども豊富
・殻の上に2つある突起には+と−がある。さばく時はこの+から切る
・天然ものは殻がカタい(天然物はあまり出回らない)
ホヤ豆知識2
・あまり知られていないが、ホヤという食材は、おどろくほどおいしい出汁がとれる(伊達家の料理にも「ほやのお吸い物」の記録がある)。東北太平洋側の地域では「ホヤ出汁そば」という家庭料理があり、最近では「ホヤ出汁ラーメン」も登場。ぶつぎりにした身と殻を一緒に煮てとった出汁は、すごく濃厚でコクがある。実際に食べてみると、旨み調味料をどっさり入れたのでは? と感じるほど
ホヤを食べないのはあまりにもったいない!
最後に伝えておきたいのは、食わず嫌いはもったいない! ということ。「鮮度抜群」のホヤを食べてみて、やはり口に合わないというなら、それはしかたがない。誰にだって好き嫌いはある。でも、鮮度の良くないものを食べた記憶からホヤ嫌いになっているなら、それはあまりに惜しいと思うのだ。
この夏、好きなあなたは何度でも。食わず嫌いのあなたは、一度食べてみる価値があるこの食材を、ぜひためしてみていただきたいと心から願っている。
◉ちなみに、宮城県塩釜市には「ほやほや屋」というホヤ専門店がある。こちらでは「ほやしラーメン」や「ほ中元」も展開中とのこと笑
三陸ホヤが新幹線で東京へ! 首都圏でも朝獲りホヤを味わえるように
三陸で朝に獲れたホヤが、乗車率の落ちてる新幹線の客席に乗って東京へ運ばれることになったとのニュース! 新鮮さが大事な魚介の中でも、ひときわ鮮度が命のホヤが夕方には東京で食べられるようになったそう。ぜひ一度お試しを!