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【おとなげない童話・ん】10 うんちくん、衝撃の告白をきく!

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Photo by pixabay


●10 うんちくん、衝撃の告白をきく!

 

 

 ある日のこと。ひるの食事も終わって、うとうとと昼寝をたのしんでいると、背中をつんつんとつつかれた。

 

 ウンコちゃんが、なぜか少し恥ずかしそうに、もじもじしながらいった。

 

「ちょっと、話があるんだけど……」

 

「うん? あ、どうしたの。あらたまっちゃって」

 

 うんこちゃんが、ユラユラと海面ちかくまであがっていったので、うんちくんも後をついていった。よく晴れた日で、海のなかまで太陽の光がさしこんで、キラキラとゆれて、すごくきれいだった。

 急にふりむくと、ウンコちゃんはこう告げた。

 

「あたし、デキちゃったみたいなの……」

 

 なんの話をされているのかすぐにはわからず、うんちくんは少し考えこんだ。そして思った。

 

(デキちゃったって、おできのこと? でも、おできができたくらいで、わざわざ俺をよび出すなんて変だし……)

 

 ウンコちゃんは、ほおを赤くそめてうつむいている。

 

「えっ! デキちゃったって、もしかして、子どもがデキたってこと?」

 

 うつむいたまま、こくりとうなずくウンコちゃん。

 

 えーー! えーーーー! とバカみたいに同じ言葉をくりかえすうんちくんに、彼女は、じれったそうにひじでつついてくる。

 

「子ども……それで出産予定はいつ頃なの? ていうか、それって……」

 

 誰の子ども? と聞きそうになってあわてて口を閉じた。そういう流れって、あとで絶対もめるパターンだよな、と思ったからだ。

 

 結局、というか当然というべきか、彼女の妊娠はただの勘ちがいだった。

 考えてみればあたり前のことで、そもそも疑惑ですらなかった。けれどそれは、ある意味衝撃的なできごとだった。

 ウンコちゃんは便秘だったのだ!

 

オホーツク海はエサが豊富だからっていったって、いくらなんでも食べすぎなんだよ」

「テヘヘ、ゴメンなさい」

 

 ウンコちゃんは、自分の頭をコツンとぶってみせた。そのかわい子ぶった彼女のしぐさを、やや冷めた目で見ながら、うんちくんの頭にふとギモンがわいた。

 

(ウンコちゃんが、便秘……? これはいったいどういうことだろう? ウンコからも、ウンコが出てくるんだろうか? それとも最初の単語としてのウンコと、次の単語としてのウンコは、何か性質が異なっているのか?)

 

 うんちくんの悪いくせが、またはじまった。哲学的といえば聞こえはいいが、ようはうんちがウンコについて疑問を抱いていることになる。

 しかし彼の思考実験は、とどまることを知らないようだった。

 

(オレはうんち……ということは、オレの場合はうんちが出てるのかな? でもなんかそれって、おかしくないか? 人間からはうんちもウンコも出てくるし、人間から人間も産まれてくるから、それはそれでいい……のか?……な? まぁ、いっか!)

 

 こんなふうに、難しいことは棚上げにしてしまうところもまた、うんちくんの美質ではあるのかもしれなかった。

 わけのわからない緊張から解き放たれた彼らは、しばしオホーツク海の波間にプカプカと浮かんで、過ぎゆく時を楽しんだ。

 

 

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