世界の裏庭

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【おとなげない童話・ん】1 うんちくん、川をくだる

(あらすじ)  川で生まれた「うんち」は、お母さんとの約束を果たすために川をくだり、広い海の旅に出る。相方は、途中で出会った「ウンコちゃん」。
 海の中は楽しいことがいっぱい、でも、ときどき危険なことも起きて……「うんち」と「ウンコちゃん」の、壮大な冒険の旅がはじまった笑!

(※題材が題材だけに、人によっては不快と感じる表現が時々ありますので、苦手な方は避けていただくのが賢明かと思います)

 

● 1 うんちくん、川をくだる

 

 その日、うんちくんは大きな決心をした。

 雪どけ水とともに、自分が生まれた川を下ることにしたのだ。彼が生まれたのは去年の秋、山の上流の渓流のほとりだった。

 川の水の中にはたくさんのサケの卵があった。うんちくんは生まれてからここまで、ずっと思っていたことがあった。

(いいなぁサケの卵たちは、あんなにきれいで。それに比べてぼくはどうして、うんちくんなんかに生まれちゃったんだろう……)

 それは、ぬぐいきれない彼の大きな劣等感だった。うんちくんとして生まれた宿命と言いかえてもいいかもしれなかった。それでもお母さんが、彼を産んだあとに息も絶え絶えのなかでいった言葉を、しっかりと胸に刻んでいた。

(海を見たい……)

 うんちくんは遠い目をしながら、しみじみとそう思った。

 ある日、うんちくんは、いきおいよく川をくだりはじめた。

 最初にあらわれたのは、大きな滝だった。これまでは生まれた場所である川の近くで、やさしいお母さんに育てられてきたので、これほど大きな滝に出会うなんて初めてのことだった。
 うんちくんは、水中を流れていた。きれいな透きとおった水だから、ずっとずっと先まで見えた。そしてその先で、突然水の流れがとぎれているのがわかったのだった。  川の流れははやかった。どんどんどんどんスピードがあがっていく。滝はもうすぐそこまでせまっていた。

(うわー!……どうしよう、どうしよう?)

 彼は旅に出てしまったことを、はやくも後悔していた。

(やっぱり、旅に出るなんてバカなことはやめればよかった……生まれてまだ何カ月しかたってないっていうのに、ぼくはこんなところで死ぬのか……)
 うんちくんは、流されながらもそんなことを考えて、ふと、疑問が浮ぶのを感じた。
(あれ? 僕はうんちくんなんだよな? なのに、死ぬってどういうことなんだろう……っていうか、うんちくんである僕は、そもそも生きてるのかな?……うんちくんは生きてるの? それとも、死んでるの? もし死ぬとしたら、それはバラバラになるって意味かな?)

 そんな哲学的ともいえる自問が、このパニックにおちいっている最中なのに、次々とうかんでくるのだった。頭の中が「?」でいっぱいになったまま、次の瞬間、フッと体がういたような感覚になったのだ。

(うわぁー! なんだかすごくキモチいいぞ……まるで鳥になって空を飛んでるみたいだ)

 そんなことを思った。死の間際になると、それまでの一生が走馬灯のように頭をめぐるというが、彼は生まれてからまだ数ヶ月しかたっていなかった。しかし、空を飛んでいると思ったのはかんちがいではなく、うんちくんは本当に宙にまっていたのだった。
 高さ10メートルもあろうかという滝を、流れ落ちるたくさんの水といっしょに、滝つぼへ向かって決死のダイブをしていたのである。

 うんちくん、危うし!

 

 

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