『深夜食堂』『続・深夜食堂』
・監督/松岡錠司 ・原作/安倍夜郎 ・出演/小林薫、不破万作、松重豊、多部未華子、筒井道隆、オダギリジョーほか
「小腹も心も満たし〼」
昭和の匂いたっぷりの人間ドラマ
観ようとしてすっかり忘れてた映画を、いったん見はじめたら止まらなくなった。もともと深夜ドラマだったのは知っていた。けど最初に見たのは、なぜか映画の『続・深夜食堂』だった(最初から観ろ)。
イントロで流れる曲と、小林薫の語りを聞いて、たぶんこれ絶対好きなやつだ、と思った。小説でいえば連作短編というスタイルで、各回の題が「とろろごはん」などのシンプルな料理名になっているのがいい。その料理に関わる新たな(または既出の)登場人物とその料理との関わりが、やわらかな人間ドラマとして描かれていく。
わいざつで入り組んだ小路のムード、やってくる人たちの感じ、街のいろんな店の店名もすべてが昭和の匂いをプンプン発散している。当たりの映画だ(まあ、とっくにヒットしてるんだから当然だけど)。
映画を観てから、深夜ドラマのほうを見はじめたら…
深夜食堂というタイトルと、小林薫が作務衣(?)を着て腕組みしている姿。ずいぶん前に何かで見かけて、観ようと思いつつ、すっかり忘れていたのだ。最初に映画を2本観て、あとはないかと探していたらテレビドラマを見つけた。
ちょっと驚いたのは、微妙な部分で映画とドラマではトーンが違う、ということ。例をあげればマスター役の小林薫。映画版では、これでもかというぐらい寡黙な印象で、セリフを削りに削ってる感じだ。しかしドラマのほうでは、特に最初のほうはそれなりに、結構あれこれしゃべっている。初めての客に話しかけることさえある。映画では客のほうからがほとんどだった(記憶違ってたらごめん)。
いくつかレビューを読んでみたが、ちょっと納得できないのもあった。映画を観た感想が「これならドラマでいいんじゃないか?」というもの。いやー、設定他ほぼすべてドラマと同じだけど、トーンが全然違うでしょう、トーンが。
個人的には映画版のほうが好み(あくまで個人の意見)。特に「カレーライス」のエピソード、すごくよかった。別の話だが、タコさんウィンナーをもくもくと口に運ぶ松重豊もいい味出してる。
すごくつくり込んでいるはずなのに、それは表に出さず、役者もストーリーも全体的に淡々としてるところも好ましい。ドラマ版はまだ3巻までしか観てないが、まだまだたっぷり残ってるようだから、とても楽しみにしてる。
個人的余談
以下は余談なので、興味のない人は読み飛ばしてほしい。
大学時代、新宿の雑居ビルでバイトをしていた。その1階に小さな居酒屋があって、そこのマスターとだんだん仲良くなり、歌舞伎町によく一緒に飲みにいっていた。ビルを出るのは夜中の2時ぐらいで、そこから安い飲み屋にいって朝5時頃まで飲んだ。
前述サイトの別の感想で「深夜12時からはじまる店なのに、普通にサラリーマンとかが飲んでるなんて設定がおかしい」的なのもあったけど、世の中を知らなすぎ。不夜城周辺では当たり前すぎて全然不思議なことじゃない。サラリーマンだっていろいろだ。
新宿ゴールデン街は知っていたが、そのマスターがあまり好きじゃなかったから一度も店に入ったことはない。ちなみにそのマスターは生まれも育ちも新宿の人だ。もちろん小林薫の風貌とは似ても似つかない雰囲気だったけど、小柄なのに筋肉質でパンチパーマをかけてたからか、よくその筋の人と間違われてて笑えた。向こうから歩いてくる人が避けて通る、ということも多かった笑 自分としては安心だったけど。
『深夜食堂』を観て、そんな懐かしい昔のことを思い出した。じつはそういう人があんがい多いから、このドラマは人気があるのかも。そんなことを思った。
ニュースで知ったけど、映画『バイプレイヤーズ』と何人もダブってる。松重豊、光石研、田口トモロヲ……こっちも観たい……