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【おすすめ傑作選◉映画】『ヴィヴィアン・マイヤーを探して』

●『ヴィヴィアン・マイヤーを探して』

・監督・製作/ジョン・マルーフ、チャーリー・シスケル、製作総指揮/ジェフ・ガーリン

 

 ものすごく面白くて、興味をそそられる映画だ。

 フィクションとノンフィクションの境界線がぼやけてしまうほどの、じつはそんな区別って便宜的なものに過ぎないんじゃないか? とさえ感じさせるほどすばらしい映画。というか、記録映像だ。

 事の発端は、アメリカ・シカゴのオークションで、一人の青年がオークションで古い写真のネガを落札したこと。380ドルで落札した大量の写真の一部を、彼がブログで紹介すると世界中で大好評を博し、写真集は全米売り上げ1位を記録、展覧会も大きな評判を呼んで……というもの。

 この一連の騒動(?)で天才写真家とまで評されるほどになった、ヴィヴィアン・マイアーは、発見当時すでに亡く、ニューヨークで乳母として生涯を生きた女性。膨大なその写真を、生涯人に見せることはなかったという。

 不思議さと不可解さが謎めいていて、観る者をひきつける。その関係者に話を聞く過程を映像に収めたところが、本作の最大の見どころだ。

 こういう謎の設定は大好きだ。もともと、仕事でも趣味でも写真を見る機会が多かった(撮るのはしろうと)からか、写真の好みは意外に狭い。モノクロ写真が好きだが、モノクロに加工されたものは嫌いで、モノクロしかなかった時代の写真が好きだ。

 

 ただ、制作者というか発見者は、そもそも最初から写真に関連する業界やインターネット、SNSをフル活用して、できるだけ話題にしようと目論んでいたのかもしれないな、とも思う。

 個人的に、この手の仕掛け方には嫌悪感を抱くたち(●●日後に死ぬワニ的な)だが、この映画に関しては全面的に賛成である。それはひとえに、この謎の女性が撮影した写真には確かに見る者を引きつける力があり、すぐれた本物の写真だという事実が伝わってくるからだ。

 こういうものを見ると、事実を描いたものもいいなと、あらためて感じる。

 

※第87回アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門にノミネートされたそう。