●『ブラックペアン』
出演/二宮和也、内野聖陽、小泉孝太郎 他 演出/福澤克雄 原作/『ブラックペアン』海堂尊 講談社文庫
最近、初めて観たこのドラマにハマっている。今ごろ? と思われるかもしれないが、このブログでは基本、少し前の傑作を紹介してるし、良い作品と出会うのに早いも遅いもないと思っている。
アイドルとしてはまるで興味ないが、役者としての二宮和也はけっこう好きだ。でもこのドラマは、リアルタイムでは観てない。というか、やっていたことも知らなかった。
医療ものは、小説も映画もドラマも好きだ。ミステリーとしても、医療ドラマとしても、本当によくできたストーリーにびっくりさせられた。これは原作のおかげだろうか。
二宮演じる医者で、「オペ室の悪魔」こと渡海の手術シーンが、非常にリズミカルでスリリング。上司である内野演じる佐伯の存在感、そしてその関係性が生み出す微妙な人間関係のもつれや、齟齬から生まれる葛藤が描かれ、その謎が徐々に解き明かされていく。
タイトルでもあるブラックペアンは、手術器具のこと。ストーリー中ではずっと、超一流外科医である佐伯の手術の成功を示す象徴として扱われていた。だから観る側も、大学病院の教授の権威の象徴なのだろうと思いこんでしまう。
ところが、ラストで明らかにされるブラックペアンの秘密に驚いた。医療過誤にからむ、渡海の父と佐伯との過去の因縁と、ブラックペアンとが(論理的に)つながっている。
原作者も医者だけに、さすが典型的な超理系ならではのアイディアが、本当にみごとだ。あらゆる意味で、感心させられることしきりのドラマだった。
そして、けっこう泣けた。最近、涙腺のゆるみが顕著だからだろうか。
演出の福澤克雄は、かの福沢諭吉の玄孫(孫の孫)にあたる人だそう。この人の演出は、全体的に映像のトーンが暗めなところが特徴。観ているとたしかにそうで、個人的には好みだ。
TBSのディレクターで、他に『半沢直樹』『陸王』『ノーサイドゲーム』などの人気作も手がけている。どれも大人気ドラマである。