『スナーク狩り』 宮部みゆき 光文社文庫
今回は面白い構造のミステリー小説をご紹介。
物語冒頭から、複数の人物が登場してくる。おじさん、青年、美人、男……少しだけつながりのある人、または、まるで接点のなかった人たちが、ちょっとずつ何かに導かれるように近づいてくる。
この「ちょっとずつ」が、とてもスリリングだ。見えない糸でつながっているかのように、物語の中心点に向かって引かれ合うようにして、徐々にその人たちは、ある場所、ある時刻に集まってくる。そして、その一点に凝縮されてゆく。
糸を操っているのはもちろん作者には違いないのだが、この糸の引き絞り方が絶妙で、すごく自然なのだ。へたにやってしまうと、作り手の「手」が透けて見えてしまって、途端にわざとらしくなってしまうものだ。
読み終わって驚くのは、小説内時間は夜から朝にかけてのたった半日の出来事を描いているということ。だから一つ一つの密度がすごく高い。
これを書くために検索したら、ドラマにもなっていた。残念ながら映像のほうは見ていないので感想は書けないが、写真を見る限りでは配役が変わってるかも……