どこか物哀しい夕暮れどきのサギ
ある日、海へ釣りに行って、もちろんその日も釣れなかった。気軽な気持ちで海釣りをはじめてみたのはいいが、何回やっても、いろんな港や浜辺へ行っても、さっぱり魚が釣れてくれない。だから、暇を見つけて写真を撮るようになったわけである。
上の写真は、やはり釣れなかった日の夕暮れ近くに撮った写真だ(ちなみに撮影したのは私ではない人)。
この一枚を見たとき、思わず笑ってしまった。丸まったその背中に、そこはかとなく哀感がこもっているように見えたからだ。村上春樹風にいえば「省察と無意識の境をにらんでいる」……というような。
頭にわずかに冠羽のようなものが見えている気もするから、ゴイサギではないかと思うのだが、はっきりと断言はできない。野鳥に詳しい方がいたら教えていただきたいと思う。
醍醐天皇から五位を授かったからゴイサギ
サギの仲間は、水辺の鳥ということもあって脚が長く、まっすぐにスッと伸びているものが多い。そして、なぜか背中を丸めて立っている。そんな姿かたちだからなのか、野鳥のなかでもどこか人間を思わせる気配があると、個人的には思う。
さらにゴイサギは、その名称からしてすでに人間との関わりが深い鳥である。というのも、醍醐天皇が、平安京の大内裏に隣接して造らせた神泉苑の池泉で、このサギを見て「五位」を授けた、との故事からその名がついたとされているからだ。繁殖期になるとのびてくるという、2本の飾り羽を見て、その優雅さを称したのだろうか。
田んぼで、海辺で、川岸でと、水辺に出かけていく機会が多いだけに、私にとってはとても身近で親近感のわく野鳥だ。
ゴイサギとは
〈ゴイサギ〉 五位鷺 コウノトリ目 サギ科
・全長60cm前後
・日本では本州以南で繁殖する留鳥
・頭と背は黒がかった緑色で、腹面は白色、翼は灰色
・繁殖期になると、後頭部から2本の白く長い飾り羽がたれる
・水辺でカエルや魚をエサにする