『コフィン・ダンサー』 ジェフリー・ディーヴァー 文藝春秋
ひところ、 海外ミステリーをまとめて読んでいた時期があった。なかでも、よくミステリーランキングで上位を占めていた、この作者の小説はいくつも読んだ。
本書は、映画でも有名な〈リンカーン・ライム〉シリーズのなかの一作。
読みはじめたときは、いよいよディーヴァーだ! と意気込んだものの ……あっという間に読んでしまった。それにしてもどうして、この人の小説はこんなに面白いんだろう? 不思議。
そこで今回は、ストーリーの紹介ではなく、なぜ「面白い」のかを、自分なりにちょっと分析してみた。
●まず残り時間を区切る……これ大事。いわゆるタイムリミットを設定して、読み手の焦燥感をジリジリとあおる、というやつ。同じ作者の、こちらも大好きだった『静寂の叫び』もそうだった。
これはミステリーやサスペンスの常道といってもよく、ハリウッド映画の得意技でもある。
●くるくると変わる視点人物……その場面場面で、一番心情を知りたい(と読者が思う)人の内面を描写していること。言い方を変えれば、読者の気持ちをつかみつづけること、ともいえるだろう。
●そしてやはり、複雑でどんでん返しの多いプロット……これは一種の才能といってもいいんじゃないだろうか。それにしても、スティーブンが●●●じゃなかったとは!(ちょっと納得できないところもあるけど)
本作に少しだけ不満があるとすれば、あまりに「どんでん返し+こけ脅し」を意図しすぎたためか、ストーリーのラストの部分が軽くなってしまっていることかもしれない。まあ、贅沢な不満だけど。
個人的には『静寂の叫び』の読後感のほうが、心にずしりとくるものがあって好み。こちらも本当に傑作です。