黒と白のモノトーンの全身がかっこいいオオバン(写真が下手で申し訳ない)
●オオバン
これは、とある漁港(太平洋側)へいったときに撮った写真だ。しかし本音をいえば、目当てにしていたのはコクガン(黒雁)だった。
それほど野鳥に詳しいわけではないので、波間にプカプカ浮かんでいた真っ黒なこの鳥が、てっきりコクガンだとばかり思い込んで撮影した(じつは実物をまだ見たことがなく、もちろん写真も撮れていない)。
コクガンは渡り鳥として日本に飛んでくるのだが、天然記念物でもあり、新聞記事で「数羽見ることができる」と書いてあったので足を運んだのだ。
本物のコクガンは、こんなふうに真っ黒ではないらしい。確かに全体的には黒っぽいようだが、首の部分に目立つ白い輪っかのような模様があって、羽のあたりは茶色がかっているそうだ。
このオオバンという水鳥が、あの沖縄にいる「ヤンバルクイナ」の仲間だということを、今回初めて知った。ヤンバルクイナを撮影する機会は今後もなさそうなので、少しだけ記しておけば、1981年に発見された新種のクイナの仲間で、世界でも沖縄本島北部にだけ留鳥として生息している珍しい鳥だ。ほとんど「飛べない鳥」のようで、その分とても警戒心が強く、そのせいで発見が遅くなったのかもしれない。
オオバンは、以前も別の場所の池で見た憶えがあるから、それほど珍しい鳥ではないのだろう。ただ、カラス以外の鳥でここまで全身真っ黒という野鳥は、あんがい少ないという気もする。水に浮かんでいると、それぐらいよく目立つ。
モノトーンの色調をもつ鳥としてはほかに、イメージとしてはまるで違うのだけど、ヤマセミの白と黒の鹿の子模様に通ずるものがある気がする。共通しているのは、とてもシンプルなデザインだということ。
人間が着る服の「シンプルさ」は、あくまでその人の好みや個性、つまり脳が判断してみずから選び取った意匠である。けれども野生生物の「シンプルさ」は、気が遠くなるような長い年月をかけて獲得してきた、進化における選択の結果としての意匠、といえる。
オオバンという鳥は、はたして進化の過程でどのような必然性があって、このような意匠になったのか、または、ならなけれないけなかったのか、という部分が個人的にはとても気になる。
シンプルでクールな羽毛を身にまとうに至った理由、つまり、「なぜ」の部分だ。ただそれは考えても答えが出るものではない。少なくとも自然界においては、仮に結論めいたものが出たとしても、それはあくまで「推測の域を出ない」ということになる。
つまるところ、神のみぞ知る領域、ということなのかもしれない。
〈オオバン〉大鷭 ツル目 クイナ科 約40cm
・バンに似ているが、全身が真っ黒でバンよりもひとまわり大きい
・黒い体の中で、くちばしとひたいに当たる部分だけが真っ白でよく目立つ
・泳いだり潜水しながら水草や昆虫を食べるため、足にはひれ状の水かきがある
・本州の中部以北で繁殖し、冬になると中部以南に移動する