●日々のなかに自然をおく −−育ちつづけるどんぐりの木−−
以前から、公園や森でどんぐりを拾って持ち帰り、プランターなどに埋めて育てるということをしていた。絵本の『木を植えた男』の影響もないわけじゃなかったけど、きっかけは上流の川沿いのほぼ垂直な岩場に、小さなどんぐりが必死に根を張って、けなげに芽を出していたのを目撃したこと。そもそもどんぐりから芽が出るなんて考えたこともなく、あんな小さいのにすごい生命力だと感心させられた。
どんぐりは育てていると楽しいし、見ていてなごむ。何がいいかって、日々の暮らしのなかに小さな自然の循環が生まれるところ。あまり手間がかからないわりに、勝手に育ってくれる箱庭的な小さな森だ。
早春の頃、つぼみがふくらみ出したと思ってるうちに芽が出て、初夏には薄緑色のきれいな新緑の葉が広がっていき、暑いさかりになれば濃い緑色へと変わり、秋の深まりとともに紅葉・黄葉し、冬になれば葉を落として枝と幹だけになる−−と、小さなプランターのなかで、山の自然と同じことをしてくれる。
●どんぐりの木が好き
個人的に好きなのは、ミズナラやコナラというどんぐりの木。ミズナラは深い色合いに紅葉し、コナラは黄葉する。実際に育ててみると、芽がでたあとは信じられないほど手がかからない。最初の数年を虫とかに負けないで乗りこえれば、あとは水やりするぐらい。
ただ、植える前に最低限のチェックは必要になる。まずひろって持ち帰ったどんぐりは、水を張ったバケツなどに入れてみる。すると虫食いのものは浮かんでくるので、沈んだものだけ埋めるようにする。
これまでも鉢植えと地植えで数百個は育てていると思う。ただ、敷地の端にある荒地に埋めた数百個はことごとく虫や雑草にやられ、かろうじて数本が生き残ってるだけ……そのむなしさもあったのと、プランターが増え過ぎても困るので、あらたに育てるのはやめた。
庭のプランターで育っている最高齢はミズナラの木で、樹齢23年ぐらい。もともと落葉高木なので地植えにすれば2、30mの高さに成長するはずだが、底の浅いプランターに植えてあるので、背丈はいまでも1m50cm前後だ。いまは落葉しているが、ここのところの暖かさで新芽もふくらんでいたのが、すでに葉が伸びている。
●「オーク」は樫の木ではなくミズナラのこと
ちなみに、家具に使われるオークは、明治時代の誤訳で樫の木とされてきたけど、じつはミズナラのことだそう。北海道産のミズナラがヨーロッパでは、高級家具の材料として重宝されたとなにかで読んだことがある。
少し前から苔も気になってて、2つのプランターに苔を移植してみた。小さな木の根もとに苔があったらいい風景だな、と思ったから。苔を育てるのはむずかしいと何かで見たから、できるだけ毎日じょうろや霧吹きで水やりをするようにしている。でも去年の冬、あんなにみずみずしい緑色だったのが、少しずつ茶色っぽい部分が増えてきて、やっぱりダメかと諦めかけていた。
ところが春本番になったころから、ちょっとずつだけど緑色が復活し始めてきている。自分なりに試行錯誤していたつもりなので、すごくうれしかった。ちょっとだけ調べてみたら、苔は枯れてしまうことはあまりなく、条件が悪いと休眠状態に入るのだという。それで好みの環境になったところで、また復活する、と。
色は美しいし、見た目もかわいらしいくせに、なかなかしぶとい生きものだなと思う。新型コロナの影響は世間を席巻しているが、この猛威がおさまるまで、いましばらくは息をひそめているしかない。苔の生命力を見ならって。
https://enpitsu1201.com/entry/2020/06/01/【どんぐりの木の6月】_濃緑の葉と苔(とMossテント)
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