世界の裏庭

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小説、童話、迷言・珍言

『事件家族』第2章-6

☆ 仙台宮城インターから上り車線に入ったところで、草壁の携帯が鳴った。車にはハンズフリー通話の装置がつけてあり、運転しながら話ができる。 「……いまどの辺だ?」 「宮城インターから入ったばかりです」 「仙台南インターのジャンクションから、仙台南部…

『事件家族』第2章–5

☆ 草壁家の一室でコーヒーを飲みながら、大嶽は何十回も考えた内容を反芻していた。一階にある居間の隣にある和室で、ふすまも障子もすべて閉め切ってある。風は強いがよく晴れた日で、窓に面した障子が白く発光しているように見えた。 携帯の基地局は街の中…

『事件家族』第2章-4

☆ 翌早朝、六時——。 陽平は興奮していたためか、五時ごろから目がさめていた。外がまだ薄暗かったのでベッドから出ないでいたのだけど、がまんできずに起きたときでも六時前だった。 ゆうべは下の部屋でお父さんやお母さん、警察の人たちが夜遅くまでいろん…

『事件家族』第2章−2

店の周囲には警戒のために警官が立ち、鑑識の人間たちが忙しそうに動き回っていた。裏口から家に入った。 鹿野シオンの身辺情報は捜査員から聞いていた。名字が森と鹿野と違うのは、シオンが孫ではなくて姪の娘に当たるからだ。いつも店にいるおばあさんは小…

『事件家族』第2章–1

【第二章】 鹿野シオン事件 ☆ 草壁から電話が入ったとき、大嶽は署の会議室にいた。 携帯のディスプレイを見ながら考えた。きっと陽平の話だろう。たしかに気になってはいるものの、あくまでもそれは個人的な問題だ。一方、森たばこ店の事件は公務だ。 迷っ…

『事件家族』第1章-6

☆ 聡子は二人が戻るとコーヒーをいれるかと尋ねた。大嶽はお願いしますと答えた。 電話が鳴った。 草壁は電話を見つめ、それからすがるようにこちらを見た。ジャスト十二時だ。しんとした室内に、やけに大きな呼び出し音が断続的に響く。 大嶽は後悔していた…

『事件家族』第1章-5

☆ 「おれ、浮気してるんだよ、じつは」 草壁が言った。聡子がいないかと、大嶽は慌てて辺りを見回した。 「バーの女だけどな。うちに電話をかけてよこしたってのは、そいつかもしれないと思ってさ」 「突然なんの話だ?」 夜になっても息子が帰ってこず、脅…

『事件家族』 第1章-4

☆ 大嶽修二の携帯電話が鳴ったのは、聞き込みの最中だった。 街中のとあるマンションの玄関で若い男に話を聞いていた。いつもなら仕事中はマナーモードに切り替えているが、忘れていたらしい。画面も見ずに大嶽はマナーモードのスイッチを押した。 「それに…

『事件家族』 第1章-3

☆ 気が重かった。 家路につくとき身体も気も重いのは、いまにはじまったわけではないが、それにしても今日は格別だと、草壁雅人は思った。小さな駅前の商店街を抜けて公園を通りぬける途中、人気のないベンチの前で草壁は立ち止まった。 晴天による放射冷却…

『事件家族』 第1章-2

☆ 陽平は黙りこんで椅子に座り、足をぶらぶらさせていた。ダイニングテーブルの上には大好物のフルーツゼリーが置いてあるのに、珍しく手をつけようとしなかった。 陽平は二日前に小学校を卒業し、四月からは中学生になるが、骨は太いけれど身長が高くはなく…

『事件家族』 第1章ー1 長編ミステリー

◉新シリーズ開始! (あらすじ) ある朝、草壁家にかかってきた一本の電話が、すべてのはじまりだった。英語で話してくるのだが、どうも様子がおかしい。意味はわからないが、何やら、きな臭い事件の気配がただよいはじめる−−。 【第一章】 草壁陽平事件 ☆ …

『その男、椎名』第7章(完結)

【最終章】 ●七人目 場所/警視庁本庁第七取調室 被インタビュー者/椎名 男はICレコーダーのスイッチを押していった。 「私は係官の九条。録音させてもらうが、いいな」 椎名は頷いて答えた。 「まさか、私のほうがインタビューされる羽目になるとは思い…

『その男、椎名』第6章-3

「多分、そんな感じではなかったと思う。椎名さんが知ってるかどうかわからないけど、彼女、どちらかといえば引っ込み思案だったから」 「昔会社で一緒だった同僚の女性も同じようなことをいってました。誰とでも気軽に喋れるタイプじゃないけど、でも男には…

『その男、椎名』第6章-2

椎名は腕時計で時刻を確認した。このバーの開店時刻は十八時、いまは十六時二十五分。まだ一時間半近くあった。料理屋であれば仕込みに時間がかかるのはわかるが、バーだから出すのはせいぜい酒のつまみ程度だろう。 ようは開店時刻が迫っているというより、…

『その男、椎名』第6章-1

●六人目 堂園寛樹/バー経営者 場所/『Bar オーバル』 薄暗いバーだった。オーナーの堂園はカウンターに両手をつき、苛立ちを抑えつけるような調子でいった。 「ですから、警察にもう何度も同じこと話してますけど、僕は犯行が行われたとされる前後は日…

『その男、椎名』第4・5章-3

「それってもしかして、僕が警察に一一〇番通報の電話をしてたときの声じゃないですか? 人間って気絶してても耳は聴こえてるもんなんですね」 瀬川はそこで慌てて片手を左右に振ってみせた。 「だからほら、夢か現実だったのか自分でもわからなかったから。…

『その男、椎名』第4・5章-2

「その場で気絶したわたしが、その前後の記憶が途切れていたわたしがこんなことをいっても説得力ないかもしれないけど、気を失う前に若い男性、つまり神さんと二言三言言葉を交わしたはずなんです。その後で気を失ったと思うんです。だって交わした言葉、憶…

『その男、椎名』第4・5章-1

●四・五人目 瀬川春子/水道検針員 神匠/大学生・新聞配達員 場所/公共施設待合ロビー † 今回、新聞記者を名乗ることにしたのは、インタビューの相手が新聞配達をしていることも理由のひとつだった。 神匠(じん・たくみ)は瞳を輝かせて、ためつすがめつ…

『その男、椎名』第3章-3

『その男、椎名』第3章–3 長編小説 椎名はノートを開いて事前に書いておいた質問を探し、まだ訊き洩らしている項目をいくつかチェックした。 「花穂さんが同じ会社にいた最初の頃二人とも恋人はいなかったとのことでしたが、その後はどうだったんでしょう」 …

『その男、椎名』第3章-2

『その男、椎名』第3章–2 長編小説 そこにランチがやってきた。美絵はうれしそうににこにこ笑うと「うわっ、豪華」と大きな声をあげた。 「こんな贅沢なランチ、すごい久しぶり。いただきまーす!」 「ゆっくり食べながらでいいですから」 美絵はまず千枚漬…

『その男、椎名』第3章-1

『その男、椎名』第3章–1 長編小説 ●三人目 金城美絵/被害者の元同僚 場所/京都府宇治市 お番菜『らくら』 † 「へえ、インタビュアーなんて、そんな職業があるんですね」 金城美絵は丸い目をさらに見開いてそういった。椎名が渡した名刺を興味津々という感…

『その男、椎名』第2章–3 長編小説

『その男、椎名』第2章–3 長編小説 † 「よーし、もっと新発見が出てきそうな気がしてきたぞ。よし四人目、この客のことはある程度憶えてるよ。というのも、あの日の中で一番たくさん会話した客だからなんだ。四十代くらいの人で仕事は自営業。派手な服装の人…

『その男、椎名』第2章–2 長編小説

『その男、椎名』第2章–2 † 「葉山は海の街だけど、実は山の自然も豊かでね。この辺から鎌倉あたりにかけては森に囲まれたお寺なんかも多いんだ。俺と女房は寺社巡りが好きで、仕事が休みの日なんかはよく出かけたもんだよ」 「地元のお寺や神社が多かったん…

『その男、椎名』第2章–1 長編小説

『その男、椎名』 第2章-1 ●二人目 漆原剛介/タクシー運転手 ●場所/神奈川県三浦郡葉山町 レストラン『ヴェリータ』 † 「いやあ、こんな遠いところまで呼び出しちゃって申し訳ありませんでしたねえ、刑事さん」 「いえ、捜査ですから。事情を知ってる方か…

『その男、椎名』第1章-3 長編小説

『その男・椎名』第1章-3 † 背もたれから背中を離し、身を乗り出して椎名は尋ねた。 「花穂さんについての沢崎さんの印象は、最初のお話と変わりありませんか」 「どういう意味です?」 「良い思い出しかない、そういってましたが」 沢崎は一瞬考えてから微…

『その男、椎名』第1章-2 長編小説

『その男、椎名』第1章-2 † 沢崎が目を輝かせていった。 「そこには、昔の恋人というような存在も含まれるわけですよね」 「もちろんそうです。最近増えてきたストーカー事件なんかは、まさにその典型といえるでしょう。動機は愛情のもつれや金、嫉妬、プラ…

『その男、椎名』第1章-1 長編小説

(内容紹介) その男、椎名はある事件の真相へと近づくため、インタビュアーとして関係者から話を訊きだしてゆく。 相手に会うため、椎名は神奈川の葉山へ、京都へと出向く。相手に合わせていくつかの身分を騙りつつ、会話をとおして見え隠れしてくる事件の…

『 Poo-kun's trip』16 (End)

●16 Poo and Unko aim for their hometown. And... He and her began to trace the river, aiming for the upstream where they were born. It was literally dead. The first thing that appeared was the embankment downstream. For many years, they had…

『 Poo-kun's trip』15

●15 Poop, finally to the river of my hometown Punch-kun and Unko-chan swam hard. Off the Bering Sea, he was heading to the hometown of the sea in the north west of the Pacific Ocean. "Unko-chan, you've been swimming a lot, but are you tire…

『 Poo-kun's trip』14

●14 Poo, hometown and instinct It was a hot summer. Despite their usually weak appetite season, their appetite has increased for some reason. I ate so much about the plankton, which was terrifyingly full, and the myriad of big and small cr…