世界の裏庭

読書、映画、創作、自然など

『事件家族』第2章-7

☆ やられた、と大嶽は思った。 完全に裏をかかれた。無線マイクに向かって叫んだ。 「犯人は東部道路の新名取大橋上から、名取川に向かって現金の入ったバッグを落下させ、水上バイクでバッグ回収後、河口方面へ逃走。水上バイクは青と白のツートンカラー、…

『事件家族』第2章-6

☆ 仙台宮城インターから上り車線に入ったところで、草壁の携帯が鳴った。車にはハンズフリー通話の装置がつけてあり、運転しながら話ができる。 「……いまどの辺だ?」 「宮城インターから入ったばかりです」 「仙台南インターのジャンクションから、仙台南部…

『事件家族』第2章–5

☆ 草壁家の一室でコーヒーを飲みながら、大嶽は何十回も考えた内容を反芻していた。一階にある居間の隣にある和室で、ふすまも障子もすべて閉め切ってある。風は強いがよく晴れた日で、窓に面した障子が白く発光しているように見えた。 携帯の基地局は街の中…

『事件家族』第2章-4

☆ 翌早朝、六時——。 陽平は興奮していたためか、五時ごろから目がさめていた。外がまだ薄暗かったのでベッドから出ないでいたのだけど、がまんできずに起きたときでも六時前だった。 ゆうべは下の部屋でお父さんやお母さん、警察の人たちが夜遅くまでいろん…

『事件家族』第2章–3

☆ 「それじゃ、おれがシオンちゃんを娘だと勘違いさせてしまったのは、結果オーライだったってことか?」 「それは言いすぎだが、最悪の結末を未然に防いだ可能性もなくはない」 「本当か!」 突如草壁の目が光り出したのを見て、大嶽はやはり話すべきではな…

『事件家族』第2章−2

店の周囲には警戒のために警官が立ち、鑑識の人間たちが忙しそうに動き回っていた。裏口から家に入った。 鹿野シオンの身辺情報は捜査員から聞いていた。名字が森と鹿野と違うのは、シオンが孫ではなくて姪の娘に当たるからだ。いつも店にいるおばあさんは小…

『事件家族』第2章–1

【第二章】 鹿野シオン事件 ☆ 草壁から電話が入ったとき、大嶽は署の会議室にいた。 携帯のディスプレイを見ながら考えた。きっと陽平の話だろう。たしかに気になってはいるものの、あくまでもそれは個人的な問題だ。一方、森たばこ店の事件は公務だ。 迷っ…